ICカードデータによる災害時の公共交通の運行と利用実態の分析

A STUDY ON ACTUAL OPERATION AND DEMAND OF PUBLIC TRANSPORT AT THE TIME OF THE DISASTER BY USING SMART CARD DATA

三好 雄也
Yuya Miyoshi

 Use of the smart card when getting on public transportation, is increasing. Therefore a great deal of data is accumulated. The study which analyze using these data is receiving a lot of attention. There are many analysis of the public transportation users’ behavior all over the world. In this study, I use smart card data of bus for Kumamoto city. The purpose of this study is second. The first one is an analysis of operation before and after the Kumamoto earthquake. The second one is an analysis of the characteristic of route.

KeyWords: smart card data, Kumamoto city , cluster analysis,earthquake

 日本では,モータリゼーションが進展し,年々自動車の分担率が向上している.そのために排気ガス等による大気汚染の問題や交通渋滞など,自動車交通を原因とする問題が深刻化している.地方都市では,公共交通利用者の減少によって公共交通事業者は赤字経営を強いられたり,事業から撤退する路線が増加する等の深刻な問題が発生している.このような状況を改善し,利用者を増加させるには,快適で定時性・信頼性の高いサービスを提供するために,公共交通事業者は運行や実態を詳細に把握し,需要の変動や利用特性をとらえ,それに応じた適切なサービスを提供することが求められている.従来,我が国では公共交通における需要調査は調査員が行うカウント調査やパーソントリップ調査などのアンケート調査などが主として実施されているが,回答数が少数であること,調査回数が限られるため,特定の日の内容しか得ることができないなど,詳細かつ継続的な調査を行うことが困難であった.
 近年,公共交通の乗車券としての交通系ICカードの導入は,大都市だけでなく,各地に拡大しており,発行枚数,利用可能地域は年々増加している.国土交通省の発表1)によると平成25年3月末に全国10種類の交通系ICカードの相互利用サービスが開始され,1枚のカードで公共交通機関を利用できる範囲は大幅に拡大している.同省では訪日外国人旅行者2,000万人に向けた取り組みや旅客交通サービスの向上の一環として,平成32年までに相互利用可能な交通系ICカードを47都道府県で利用可能にする目標を定めている.また,日本では2013年6月14日に「世界最先端IT国家創造宣言」をしており,公共交通事業者は,従来では入手することが困難であった大量の交通系ビックデータを収集・蓄積することが可能になることが予想される.
 熊本市でも平成26年3月に全国相互利用可能なICカード「でんでんnimoca」が熊本市電に,平成27年4月より熊本地域振興ICカード「くまモンのIC CARD」が路線バス及び熊本電鉄電車に導入された.しかし,図-1に示すように,熊本市では市電の乗車人員は増加しているもののバスの乗車人員は大幅に減少している.ICカードデータから得られる情報を多様に分析することで,適切なサービスを提供することによって利用が状況の改善することが期待される.
 本研究では,路線バスICカードの利用履歴データを災害発生前後比較することで,公共交通の利用と運行状況を分析する.さらに,災害時の利用実態や遅延原因を分析する.さらに,需要パターンが通常に戻るまでのプロセスを把握することを目的とする.