実証実験によるRide-Sharing Taxiサービスの 導入可能性に関する基礎分析

BASIC ANALYSIS ON THE POSSIBILITY OF INTRODUSING RIDE-SHARING TAXI SERVICE USING SOME SOCIAL DEMONSTRATION EXPERIMENTS

松尾 星凜奈
Serina MATSUO

 As a taxi operation method that not only operates vehicles efficiently but also improves user convenience, Ride-Sharing taxis has been attracting attention. In this study, we obtained reservation log data, vehicle trajectory data, and user questionnaire survey data from different types of ride-sharing taxi social experiments conducted in Arao City and Kumamoto City. Based on these data, we analyzed the users’ characteristics and vehicle operating conditions as well as users’ evaluation.

KeyWords: Ride-Sharing Taxi, social experiment, Arao, Kumamoto

 

(1) 荒尾市の公共交通計画 荒尾市は熊本県の西北端に位置しており,福岡県大牟田市,玉名市,西は有明海を隔てて長崎県,佐賀県に面しており九州各都市とのアクセスに恵まれている.JRや西鉄,路線バス,高速バスが運行している.
 しかし,路線バスは荒尾市の人口減少や高齢化,自家用車への依存により利用者は減少傾向にある.路線維持のための市の財政負担額も年々増加している. そこで荒尾市は,2013年に「路線バスを中心に,他の交通モードを組みあせた最適で持続可能な地域公共交通体系の構築」を目的に荒尾市地域公共交通総合連携計画を策定した.路線バスはエリアによって利用人数が大きく異なるため,路線バスを維持するエリアとそれ以外の交通手段を導入するエリアと区分し,効率的かつ持続的な地域公共交通を構築する.
 計画の内容は路線の再編,運行時間の拡大,乗合タクシーの導入である.路線再編や運行時間拡大は,利用者の需要に合わせて行うことで利便性を向上させ公共交通の持続可能性を向上させた.乗合タクシーについて,公共交通空白地域かつ高齢化が進んでおり,利便性が非常に悪いが路線バスによる利便性の確保が難しいという条件のもと平井地区・府本地区に予約型乗り合いタクシーが導入された.予約型乗り合いタクシーは出発する時間帯と目的地は決まっているものの,エリア内であればどこでも乗り降りできるのが特徴である.しかしその利用者数は想定より少ない.路線バスの通っている地域へは乗り入れができないため目的地まで乗り換えを行う必要があり,それが負担となっている.また利用時間帯も決まっていることが利用者数の増加が伸び悩む一因だと考えられる.
 そこで荒尾市では,路線バスと乗合タクシーだけでなく,相乗りタクシーの導入を提案した.相乗りタクシーは利用時間帯も乗降場所も決められておらず,自由に乗り降りできるため路線バスの少ない地域や公共交通での移動が困難な人でも利用ができるのが特徴である.本研究では荒尾市の相乗りタクシー導入のための実証実験を扱う.

(2) 研究の目的と意義
 タクシー業界は人手不足が問題視されている.タクシーの事業者数は10年間で10%減少,運転手は38万人から30万人に減少している.理由としては運転手の高齢化やタクシー業界のイメージ,また賃金水準の低さから新たな人材(特に若い世代)を確保できていないことがあげられる.タクシーの運転手が不足すると運送効率が落ち収入源,それに伴い賃金も低下する悪循環に陥る.
 運転手不足のままでは年々増加する訪日観光客の増加による需要に対応しきれない可能性もある.したがってタクシー業界ではなるべく早く運転手不足の解消,もしくは運送効率を上げる必要がある.しかし人手不足解消は短期間で行えない.そこで運送効率の向上のための解決策として相乗りタクシーが提案される.
 相乗り行為は道路運送法第4条に抵触するため,また事前確定運賃の禁止されていた.道路運送法第4条においてタクシーは1個の契約により自動車を貸し切って運送する事業と定義され,相乗りを行うと複数個の契約となる.そのため法律上行えない.しかし,2020年の東京オリンピックを受けて2019年3月に相乗り型タクシーの普及に向けた検討の支持が行われ,事前確定運賃については2019年10月に利用可能となった.このことから今後相乗りタクシーの増加,普及が見込まれる.
 2018年に東京で行われた相乗りタクシー実証実験では利用申し込みは5000人程度だったが,マッチングが成立し実際に乗車できたのは500人弱であり,マッチング率は非常に低い.また同乗者に住所や勤務地が知られるかもしれないといったプライバシーの懸念も挙げられてる.相乗りタクシー導入における課題は地方や運行方法が異なれば課題は異なることが考えられる.
 したがって本研究では,1)荒尾市の相乗りタクシー実証実験の結果から,熊本 Ride-Sharing TAXI TOUR実証実験の概要と運行の利用の実態を明らかにすること,2)これらの結果からRide-Sharing Taxi導入における課題を探るべく基礎分析を行い,Ride-Sharing Taxiの導入可能性について検討する.