研究室紹介

岩の力学連合会が発行している雑誌「岩の力学ニュース」110号に,本研究室が紹介されました。
このページは,掲載された内容をもとに作成しています。
(作成途中です。今後,レイアウトなどを変更する予定です。)

はじめに

我々の研究室は,熊本大学工学部の土木系学科に所属しています.研究では,土木や資源開発分野における岩盤工学に関する諸問題を対象としています.

現在の研究室メンバーは,こちらをご参照ください。


写真-1 2015年度のメンバー

教育方針

4年生時には,岩盤工学の基礎知識を習得するために,学生が自ら講師となる「岩盤力学ゼミ」を実施します.また,1年を通じて卒業研究に着手することにより,研究遂行能力を身につけます.大学院へ進学すると,ほとんどの学生は1〜3か月間の海外インターンシップを経験します.とくに,2011-2012年にはM1の学生がインドネシアでの1年間の留学を実施しました.このような海外での研究活動により,より幅広い専門知識,国際的視野,コミュニケーション能力を習得します.

また,当研究室では「新聞ゼミ」というものを実施しています.このゼミは,学生が1つの新聞記事およびそれに関する議題(例えば,○○法案に賛成か,反対か?)を選択し,その記事に関する基礎知識や歴史を調査して発表するとともに,その問題について全員で議論を行うものです.グローバル化が進む中,大学にとって海外で活躍できる人材を育成することがますます重要になります.学生には,岩盤工学の専門知識や語学力を身につけるのはもちろん,現在の世界情勢を把握し,その問題の背景・歴史についての知識を持つとともに,それに対する自分の意見を伝える能力も鍛えてもらいたいと思っています.

研究紹介

土木や資源開発分野における諸問題を,研究テーマとしています.以下に,主な最近の研究を紹介します.

応力変化測定法の開発に関する研究

岩盤構造物の合理的な設計のためには,周辺岩盤の初期応力を精度良く測定することが重要であり,このために多くの測定法が開発されてきました.一方,岩盤構造物の建設の進行にともない,岩盤応力は変化します.応力変化の測定は,構造物の設計の妥当性の検証や情報化施工のために重要です.そこで本研究室では,応力変化を2次元的に測定する簡易な岩盤応力測定法を開発しました.この方法は,ボーリング孔壁面の変形状態がその周辺の岩盤応力に依存していることを利用したもので,孔壁変位測定法(CBDM: Cross-sectional Borehole Deformation Method)1)と呼ばれます.

本研究で開発・製作した測定装置の概要を図-1に示します.CBDMでは,壁面形状を非接触で測定するため,ボーリング孔周辺を乱すことなく任意の位置で何度でも応力変化が評価可能であることが,特徴の一つに挙げられます.また,空洞建設の進行にともなった原位置測定による応力評価により,本測定法の有効性が示されました2).CBDMは,岩盤構造物の建設に伴う周辺岩盤の応力変化や構造物の長期安定性評価のための応力変化測定法として利用されることが期待されています.


図-1 CBDM測定装置の概要

岩石の破壊靱性に関する研究

岩石が外力を受けて破壊する際には,まず,岩石内に先在する微小き裂の先端から破壊き裂が発生し,それが成長・連結することにより破断面が形成され,最終的に破壊に至るという過程をたどります.このような破壊過程を理解するためには,微視的なき裂の進展抵抗値,すなわち破壊靭性を評価することが重要となります.そこで,本研究室では,岩石の破壊靱性に関する研究を行ってきました.

岩石の破壊靭性を求めるために,SCB (Semi-Circular Bend)試験を実施します(図-2).この試験は,人工き裂を有する半円盤供試体に曲げ荷重を負荷し,記録された最大荷重から破壊靭性を求めるものです.本研究では,水蒸気で満たされたチェンバー内でこの試験を実施することで,破壊靭性が岩石周辺の水蒸気圧に影響されることを明らかにしました3).また,試験後の供試体の破断面をX線CT法により観察し,破壊靭性は岩石の微視的な構造,すなわち先在する微小き裂,粒子配列,鉱物の種類に影響を受けることを提言しました4).近年は,個別要素法(DEM: Distinct Element Method)を用いたSCB試験の数値シミュレーションを行い,岩石の粒子配列が破壊靭性に与える影響について検討しています.また,鉱物の強度を評価するための,微視的破壊靭性評価法の開発にも取り組んでいます.これらの研究を総合し,岩石の破壊過程の解明を目指しています.


図-2 研究概要

X線CT法を用いたコンクリート診断に関する研究

コンクリート構造物の維持・管理は,社会資本整備における大きな課題であり,これらの寿命を延ばし機能を回復させるためには,コンクリートの現状を診断し,的確な評価を行うことが重要です.一方,熊本大学では1996年に産業用X線CT装置を導入しており,これを用いると非破壊で材料内部構造の可視化が可能です.本研究室では,X線CT法のコンクリート診断への適用について検討してきました.

コンクリートは,骨材やモルタルなどで構成される複合材料であるため,その物性や力学的な特性,耐久性などの諸特性は,構成材料の配合比率などに影響されると考えられます.本研究では,図-3に示すように,円柱コンクリート供試体のX線CT撮影により得られたCT画像に対し,画像処理によるコンクリートの構成材料の定量化および配合推定手法の確立を行いました5).近年では,コンクリートの劣化評価に関する研究にも取り組んでいます.これは,熊本大学に2010年に新たに導入された,マイクロフォーカスX線CT装置で撮影されたCT画像を分析することで,はつり工法(コンクリート構造物の劣化箇所を物理的に除去する工法)が行われたコンクリートにおいて,劣化箇所やその程度を評価する手法を確立しようとするものです.現在は,すでに確立させたコンクリート構成材料の定量化手法を取り入れつつ,劣化を評価できるパラメータの抽出とそれを用いた評価法の検討を進めています6)


図-3 研究概要

おわりに

ここに紹介した研究の他にも,岩盤斜面内の地下水流れの解析,円柱供試体を用いた曲げ試験法の開発,地下水探査のための特性周波数電気探査法の開発などを行っています.今後も,世界へ通用する研究を熊本から発信できるように,研究に励みたいと思います.

参考文献

1) 尾原祐三,秦拓也,吉永徹:Journal of MMIJ, 127, 1, pp.20-25, 2011.
2) 尾原祐三,吉永徹,秦拓也,片岡みなみ,横山幸也:Journal of MMIJ, 128, 3, pp.134-139, 2012.
3) 片岡みなみ,尾原祐三:Journal of MMIJ, 129, 7, pp.425-432, 2013.
4) M Kataoka, A Hashimoto, A Sato, Y Obara: Proc. 7th Asian Rock Mechanics Symposium, Korea, pp.458-465, 2012.
5) 天明敏行,伊藤剛,濱崎大志,尾原祐三:コンクリート工学年次論文集,30, 2, pp.739-744, 2008.
6) 鄭慈恵,赤塚友,尾原祐三,谷倉泉:資源・素材学会九州支部講演要旨集,pp.43-45, 2013.

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