指導論文の紹介              update on 2004.4.5

● 平成15年度 岐阜大工学部卒業論文

小島弘子:地方都市を対象とした都市景観評価システムに関する研究

【要旨】 本研究は,地方都市における良好な都市景観形成を目指すものである.地方都市では,都市計画的に事前に景観整備の方針を検討することができる余地がまだ存在しているが,土地利用や周辺環境を無視するかのような建設行為も見受けられる.本研究では,岐阜県大垣市を対象として,まず都市景観の構成要素を整理し,評価論理を検討した上で,エキスパートシステムを用いた都市景観評価手法を構築した.

田島高志:長良川の橋梁と都市構造の変容に関する史的分析

【要旨】 本研究では、それぞれが特徴を持った長良川の橋梁が、岐阜市の都市構造に及ぼした影響について明らかにすることを目的とする。各橋梁の都市形成における役割や機能を考察することで、今後の橋梁設計や都市計画を支援していきたいと考える。研究の手法としては、県史、市史、社史、その他の記録文献、写真、地図資料などの歴史資料を分析することで橋梁の役割を明らかにしようとした。まず岐阜市におけるインフラストラクチャー整備の概要をまとめ年表の作成を行い、都市構造の変容に関する分析を行った。収集した地図資料の整理を行い、時代区分ごとに主に岐阜市の市街地を中心として都市レベルでの地図史料分析を行った。次に、橋梁に焦点を絞り、都市形成における地域レベルでの橋梁の役割について考察した。

中嶋伸恵:輪中地域における水防意識に基づいた景観変容に関する研究

【要旨】 近年の都市景観は,無計画なインフラストラクチャー整備と都市の拡大により,画一的で,個性が欠如した景観であることが問題点と言える.このような中,インフラストラクチャーが人々の生活や意識にもたらす影響は大きいと考えられる.そして,人々の意識が形となって表れた景観にとって,その影響は景観の変容につながっていると考えられる.本研究の目的は,その土地の風土に根付いた美しい景観が,人々の意識によって支えられているという景観の構造を明らかにすることである.本研究の構成は,木曽三川が流れ,古来より洪水が頻発していた輪中地域を対象として,この地域にとって重要な,治水に係わるインフラストラクチャー整備や水防活動等の現地踏査及び関連自治体へのヒアリング調査により,水防意識の時空間的な変容を明らかにした.また,景観の変容によって水防意識の変容を検証した.その結果,景観の変容は水防意識の変容と深く係わり合っていると思われる.

山田孝太郎:地域学習における「治水」の風土性に関する研究

【要旨】 土木事業は社会生活の基盤を形成するもので,小学校社会科教育においては学習の主題となるだけでなく,他の範囲(歴史や地理)の導入として活用されることも多い.本研究では,岐阜県下の小学校における地域学習を対象として,地域学習の教材として土木事業について学ぶことの有用性を示し,土木事業を通じて各地域の風土が地域学習へと反映されていることを明らかにすることを目的とした.小学校学習指導要領を基に小学校教育における地域学習の概要を把握した後,地域学習において用いられる副読本に着目し,記述の内容の整理・データベース化を行い,3つの視点から地域特性の分析を行った.