景観法を契機に,歴史や文化,地域の個性が重視され,景観づくりには様々なまちづくり活動との連携が求められている.
しかし,中山間地集落などを含む地方都市では,過疎や少子高齢化の波が高く押し寄せ,地方分権に耐えうる地域づくりが
緊急かつ長期的な展望を持って検討される必要がある.また,公共事業に対しては,地域に対して適正なインフラストラクチャー
のデザイン,マネジメントが求められている.
このような背景において,改めてあるいは新規に,景観計画が各地で検討されている.
法に基づき,行政手続によって運用される景観計画としての工夫はもちろん必要であるが,ここではもっとおおらかに,地域の景観を
計画することの意味を問い直してみたい.景観は都市開発や観光などと結びつき易いが,そのような特殊事例ばかりではなく,より一般的
で普通のまちの景観をどうデザインし,またマネジメントしていくのかを議論する必要があるためである.
「環境の眺め」である景観を計画するということは,現代においては持続可能かつ実現可能な地域のヴィジョンを描き,それらを誰にでもイメージ可能な目標像として提示し,
その実現にむけて環境の操作を行政,地域住民とのパートナーシップの下に行っていくことではないだろうか.それは戦略的な地域デザインであり,
本質的には都市計画の役割であり,地域住民の主体的まちづくりとも不即不離なものである.
景観について考えることは,住民が主体となって自ら住まう地域に対する愛着や誇りを醸成し、自治体や行政との連携によって現在の地域の諸問題に対するブレイクスルーとなりうる.そうした問題意識
に基づき、本ワークショップでは,インフラストラクチャーのデザイン,マネジメントを担う土木計画のフィールドに関連して,どのような理念,
実践的手法が必要とされるのか,様々な専門家が地域景観について議論,研究する.また,実践的な景観マネジメントを考えるためにも,広く実務者の方々にもご参加頂きたい.