河川および流域の概要

 白川は、阿蘇の中央火口丘の一つである根子岳を源として、熊本平野を貫流して有明海に注ぐ、流域面積480平方キロメートル、幹川流路延長74キロメートルの一級河川である。流域面積の約80%が阿蘇カルデラで占めており、ジョウロ型の流域は、阿蘇に降った雨を一手に引き受け九州第三の都市熊本市へ流れ込み、その後、低平地の広がる穀倉地帯を経て、干満の差が日本一大きい有明海へ注ぎ込む。
 上流の阿蘇地方は全国的にも有数の多雨地帯であり、阿蘇地帯の年間降水量は、下流熊本市の1.6倍で、全国の年間降雨量平均の2倍にもなる。また、白川は熊本市外部がより高くなっている天井川であるため、一度洪水を起こすと被害が拡大してしまう。さらに、阿蘇山が”ヨナ”と呼ばれる火山灰を多量に降らしているため、洪水時には一気に流下して被害を拡大するとともに、洪水後の市民の後片付け等にも影響を与えている。上流域の地形は比較的緩やかだが、中流域は急流で水の流れが速く、熊本市外部が広がる下流部や低平地の広がる河口部は緩やかな地形となっているため、洪水を引き起こしやすい川と言える。

 

参考HP:国土交通省九州地方整備局 熊本河川国道事務所 「白川の特性」

河川改修工事

 2003年当時の白川市街部の堤防整備状況を図に示す。白川は、全体的に川幅が狭く氾濫の危険があり、戦後においても堤防の設置等の河道改修が1956年から行われてきた。しかし、市外部において氾濫した場合の経済的損失は甚大であるにもかかわらず、現計画が策定された時点では、図のようにまだ堤防未設置の場所が残されており、白川整備は難航していた。

 市街部において整備が遅れている場所の一つとして、今回の対象地である「緑の区間」がある。緑の区間は平成2年の7.2水害においては右岸側で越堤しているなど、市街部の中でも特に科幅が狭く、氾濫の危険が高い場所であった。

堤防設置の状況(2003年)

出典:熊本大学 平成24年度卒業論文 市街地を中心とした白川整備の歴史的研究 上口雄太郎


水害の歴史

 前述したように洪水を引き起こしやすい白川では、河川の氾濫により度重なる水害を引き起こしている。

■昭和28年6月26日大洪水

 

死者行方不明者:422名

家屋浸水:31,145戸

橋梁流失:85橋

■昭和55年8月30日

 

死者行方不明者:1名

家屋全半壊:18戸

床上浸水:3,540戸

床下浸水:3,245戸

■平成2年7月2日

死者行方不明者:14名

家屋全半壊:146戸

床上浸水:1,614戸

床下浸水:2,200戸

■平成24年7月洪水(九州北部豪雨)

 

家屋の半壊:183戸

床上浸水:2,011戸

床下浸水:789戸