_深部地下環境って?_ 地下深いところ、そこにはエコとエネルギィ問題を解決する大きな可能性が眠っているかも!?

 ここでは深部地下環境工学についてご説明いたします。

学問分野:岩盤力学

岩石・岩盤を対象として、材料としての力学的特性を研究する学問です。
ダムやトンネルなど、岩盤が構造材料となる場合、岩盤力学を無視することはできません。
過去、岩盤力学の理解が不十分であった時代には、「マルパッセダム決壊事故(1959年・フランス)」の例のように、
ダムの基礎岩盤ごと崩壊したことによって500人以上の犠牲者を出した事故も起きています。
岩盤の力学的性質(強度・透水性・異方性など)を理解を深めることで、岩盤構造の安定性を予測する精度が向上し
工学的な設計ができるようになるため、人間の活動フィールドを地下深くまで広げる可能性を秘めています。


研究フィールド:深部地下環境

現在、地下深度100mを超える場所に地下空間を造り汚染物を処分する石油などを備蓄するなどの利用が進んでいます。
佐藤研究室では、この深部地下を工学的に利用する分野が研究の背景です。

①二酸化炭素の地中貯留(CCS)
 地球温暖化対策の一つとして、二酸化炭素の地中貯留が実行、計画されています。これは、火力発電所などの大規模な二酸化炭素排出源から二酸化炭素を分離・回収し、地中深くのキャップロック(難透水性層)を有する帯水層中にCO2を圧入して、二酸化炭素の大気圏への放出を止めようという試みです。(図1)
 日本はエネルギー消費の多くを石油・石炭火力に頼っているため、二酸化炭素を排出削減する有効な対策として期待されています。

            図1 二酸化炭素地中貯留のモデル図一例

 佐藤研では、この
CCS”S(Storage)"の領域で、高い圧力で岩石中に吹き込まれた二酸化炭素(CO2)が岩石内部でどのような挙動をとるのか?または効率的に二酸化炭素の貯留が実行できる方法が考えられるか?現象や課題を解明するための研究を行っています。
 過去の研究例としては、岩石内部に圧入された気体の挙動をX線CTスキャナーを使って可視化し分析を行いました。



         図2 岩石の中に気体が浸透する様子

②高レベル放射性廃棄物の地層処分

 原子力発電の発電過程で生じる高レベル放射性廃棄物の処分方法が問題になっています。放射能レベルの高い廃棄物を恒久的に地上で管理するためには、非常にコストがかかり、さらに安全面で大きな問題があると考えられています。そのため現在、人間の活動領域外である地下300mより深い安定した地層中に廃棄物を処分しようという計画が検討されています。
 この計画では地下深い岩盤中に廃棄物の処分場が建設される予定です。そこで計画の安全性を適切に評価するため、深部地下環境下における岩石の透水性や汚染物質の挙動などの物性や現象について、もっと理解を深める必要性が生じます。

 佐藤研では、このような深部地下環境を利用した工学分野に関する研究しています。現在は岩石中での汚染過程について明らかにするために、内部で物質が拡散や溶出する過程をX線CTスキャナーを用いて分析する研究などが進行中です。

研究手法:X線CTスキャナーを用いた岩石内部の可視化

熊本大学では、産業用X線CTスキャナーを運用しています。
 この産業用のX線CTスキャナーは、医療用のX線CTスキャナーよりも強力なX線(最高管電圧320kv)を試料に照射することができます。これにより、外部からでは内部の様子を観察することができない岩石ような高密度の物体であっても、その内部の情報をCT画像として詳細に得ることが可能です。(図3)


           図3.来待砂岩試料内部のCTイメージ

さらに、このCT装置がレントゲン撮影と違うのは”3次元化”した画像を入手できる点です。
CT装置は断面画像を重ね合わせることにより、2D画像を3D画像に変換できます。



このような画像を入手することで、対象試料の構造をより詳細に分析することが可能になります。
また、任意の密度領域のみの情報を抽出することができるので、たとえば岩石の空隙部分のみを抽出することも可能になります。


 また、2010年度から新たにマイクロフォーカスX線CTスキャナーの運用も開始しました。
これは、小さい物体についてμ(マイクロ)単位で内部の状態を可視化することに適した装置です。産業用よりもさらに精度が向上しているため、岩石空隙の内部や亀裂の分布などを可視化することができます。下図4(右)は、本研究室で用いているベレア砂岩の空隙分布をより細かい精度のµmオーダーで可視化したものです。産業用(左)よりも岩石内部に存在する空隙の形や堆積層の構造などを可視化することに適しています。

               図4 ベレア砂岩の空隙分布
私たち佐藤研究室では、この2つのX線CTスキャナーを活用して、深部地下環境でおこる現象の解明や工学的利用法を開発すべく、研究を進めています。


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