センターについて

センター長挨拶

X-Earthセンターを通じた、世界中の研究者や学生の
X線CT分野での研究・新技術の共有を目指して 第二章スタート

X線CTコンピューター断層撮影法(以下CT)は、医療における診断技術として広く使われてきました。今まで、この技術は工学においては非破壊検査の適用法として関心を得てきました。特に地質分野では、地盤内部の構成材料が土や岩盤、コンクリートなど、様々な地盤材料で構成されている場合でも大変有用であると立証されています。

1997年に本学に産業用X線CTスキャナが導入され,それ以来,本学の地盤工学,岩盤工学の研究者が中心となって,まず国内でX線CTに関する勉強会が重ねられてきました。この勉強会では,X線CT法が我々の分野にどのように適用でき、工学的問題を解決できるかということを議論してきました。そして、ジオマテリアルの材料の変形や破壊現象を対象にX線CT室内で実施可能な装置を独自に開発し、材料の品質評価としての利用から実験による現象評価(境界値問題を評価)することを我々の強みとして論文発表してきました。論文執筆において欠かせない既存の論文のレビューにおいて,地盤工学や岩盤工学のみならず土壌学やコンクリート工学など他分野でも利用されていることがわかってきました.20世紀末から21世紀にかけて電子メールが急速に普及し,外国の研究者にコンタクトしやすくなったという環境の変化を利用し、我々のグループは国際会議の開催地の近くでCTを使った研究者がいれば、そこを訪ね少しずつネットワークを開拓し始めました。そして2003年11月6日―7日の二日間で、地盤材料におけるX線CT法の国際ワークショップ (GeoX2003) がここ熊本で開催されました。この研究集会は地盤材料に対するX線CT法の適用についての会合としては、世界初となります。これを皮切りに、2006年にフランス・オソワ、2009年にアメリカ・ニューオーリンズ、2013年にカナダ・ケベック、2015年にベルギー、2019年にオーストラリア・ケアンズと受け継がれています。

一方2006年から本学では我々の研究グループをGeoXセンターと命名しました。そして、2008年にCTの活用の範囲が地圏環境から水圏環境や材料工学、にも拡張されるようになったため、GeoXセンターからX-Earthセンター(X-ray CT on Eco, Aqua and Resource Technology)に名前が変わりました。さらに、2010年にマイクロフォーカスX線CTスキャナが導入されたことによって、我々のX線CTの守備範囲はより学際的になり、考古学や古生物学の専門家がメンバーに参画するなど我々のアクティビティは国内外ともに充実してきました。また2010年からX-Earthセンターが学内において拠点形成研究Bに採択され、より一層の研究成果と活動ができるようになりました。2014年からは医工連携も推進するということでX-Earthセンターのメンバーに医学部の研究者が参画するようになり、論文を発表してきました。2016年に拠点形成研究BとしてのX-Earthセンターの活動を終え、その後は学内に新たにできた国際先端科学技術機構(International Research Organization for Advanced Scienced and Technology, IROAST)の中でこれまで培ってきた国際ネットワークを生かし、研究活動を続けてきました。

そして2020年にX-Earthセンターには新たに2台のX線CTスキャナが導入されることが決定し、2021年4月より運用を開始しました。1台は高出力高解像度マイクロフォーカスX線CTスキャナであり、もう一台はナノフォーカスX線CTスキャナです。新たに導入されたマイクロフォーカスX線CTスキャナは、現有の装置よりも高出力のX線を照射することができ、かつCT撮影室内で様々な力学実験が実施可能な環境を持つ優れた装置です。また、ナノフォーカスX線CTスキャナは、その名の通りナノスケールの解像度を持つ3次元X線顕微鏡とも呼ばれるような装置です。目的に応じてこれらのCT装置を使い、これまでできなかった研究がさらに拡張できるようになりました。このような環境を持つ熊本大学は、国内外においても稀有の大学機関と言えるでしょう。

新たに導入されたCTを使った研究成果はこれからです。これからの社会を担う学生さん、若手研究者と共に新しい現象の世界をCTで可視化していきたいと思います。CTスキャナはX線を使って材料内部を可視化する道具であり、分野を限りません。これがX-Earthセンターの魅力でもあります。「イノベーションは異分野融合から始まる」と言われますが、X-Earthセンターはまさに異分野融合の場を提供するイノベーションの土壌づくりになれると私は信じています。

少しでも興味を持ってくれた人がおられれば、是非X-Earthセンターまで連絡をお寄せください。

X-Earthセンター長
椋木俊文
2021/4/1

椋木 俊文 教授
X-EARTHセンター長
椋木 俊文 教授
Toshifumi Mukunoki
熊本大学大学院先端科学研究部
社会基盤環境部門
防災建築技術分野