2010年12月
title/蓄えることについて
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研究室に入ってから、多くの人と出会い、多くの本と出合い、多くの言葉をもらった。
でも、その時々に耳にした言葉も、油断すると、すぐにこぼれ落ちてしまう。
せっかく貴重な話を聞いても、素敵な言葉と出会っても、
こぼれ落ちてしまってはもったいない。
だから、僕は、できるだけその場所に行って考えるようにしている。
本に書いてある言葉、人から頂いた言葉を意識しながら歩く。
都市の話なら都市で考える。川のことなら川で考える。
実際行けなくても、行った時のことを思い返しながら考える。
そうやって、人や本から受け取った言葉を自分の体験と結びつける。
本や人が難しそうに語った言葉も、自分の体験と結びつき、居場所を見つけた途端に、
すごく単純な話だと納得できる。
そして、それは自分の言葉で語ることができる。
ちなみに、もし、自分の体験と結びつかなかったら、それはタイミングが合わなかっただけだと思うようにしている。
無理して自分を合わせるのも違うと思うし、
きっと、巡り巡って、必要になった時に頭の隅に現れるんだから、その時、大いに納得すればいいと思う。
さらに、何かを意識しながら歩くと、意識していなかったことに気づいたりする。
不思議なようで、不思議なことではなく、きっと、環境を感じるアンテナの働きが活発になるからだと思う。
当たり前のことなんだけど、すごく大事なこと。
これからも、人や本との出会いを大切にしながら、こうやって蓄えていきたい。
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写真は言わずもがな、緑の区間。
去年就活時期に出会ったおじさん。
話を聞くと、おじさんは八代出身で、学生時代に地元を離れた以外はずっと八代に暮らしていたらしい。
10年前に体調を崩し、八代から市内の病院に通院していたけど、市内の方が楽だということで、最近引っ越してきたそうだ。
しばし談笑した後で、新たな緑の区間の印象を聞く。
すると、笑顔で「きれいになって、以前よりたくさん歩くようになったよ。」と言う。
何気ない出会いと会話だったけど、
自分がやってきたこと、やろうとしていることの意味を改めて考えていた自分にとって、おじさんの笑顔と言葉は、十分すぎるものだった。
こういう出会いがあるのも、その場所に行くからこそですね。
photo&text/Satoshi INENAGA