2007年9月
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つらいときこそ
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まだ、寒さの残る三月。
当時私は、大学の後期試験を受けに父と列車に揺られながら、目的地
へと向かっていた。
“ 受かっても行く気はない”と心に決めていたその大学。
そんな意味のない受験に「いやだいやだ」と心の中で反芻していた。
やがて、目的地の駅へ到着し、ホームに降り立ったとき、私の気持ちは
頂点を極め、“溜め息”として吐き出された。
そのとき、父から言われた。「溜め息をするな。そういうのが一番嫌いなんだ。」
父からそんなことを言われたのは初めてだった。
確かに、思い返してみると、父の弱音を聞いたことはなかった。ましてや、“溜め息”など。
私は、今までマイナス要因に対し、マイナスな気持ちで応えていた。
そこからは何も生み出されないこと、マイナス要因に対し、プラスの気持ち
でぶつかっていく大切さを痛感させられた。
あのとき以来、私は“溜め息”をつかなくなった。
そして、あのとき以来、父の姿が誇らしくもあり、また少しかっこよく思えるようになった。
今日もまた列車は、人々の様々な“気持ち”を運び、そして吐き出していく。
photo&text/
Hiroto IMAI