2007年10月
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背中から聞こえる声
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私の父親は長崎造船所でタービンの設計をするエンジニアである。
そんな父親は毎日お酒を嗜み、休日の日は家で寝てばかりであった。
それに対してしばしば母親が父親に向かって怒鳴っていた。
そして未成年だった頃の私と兄は、「あのような父親には決してなるまい」と誓い合った。
でも、最近になってそんな父親の背中を意識するようになった。
朝、どのような思いで会社に出向いているのだろう。
昼、どのような思いで仕事をしているのだろう。
夕方、どのような思いで帰路に立っているのだろう。
夜、どのような思いで晩酌をしているのだろう。
父親の背中を見ながらそう思うようになった。
家の中では仕事の話をほとんどせず、何を考えているのか解からなかった父親であるが
成人して来年就職活動を迎えた今の私は、言葉にはできないがなんとなく解かる気がする。
最近ではお酒を交わしながら、エンジニアとしての先輩である父親と仕事の話をしている。
兄もエンジニアとなり、私もエンジニアへの道を歩んでいる。
いつの間にか、反発していた背中が、その背中を追うようになっていた。
私は父親の背中を目標にしながら社会へ羽ばたこうと思っている。
両親の故郷である八代の農免道路に立ち、眼前に広がる田園風景を紅く染める夕焼けを眺めながらそう思えるようになっていた。
photo&text/
Hiroyuki TOYAMA