2008年1月
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やや逆境、めげない、わかれなし。
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2008年、明けましておめでとうございます。
ふと、僕が研究室(当時、施設設計工学研究室)に入った頃を振り返ってみると、師である小林一郎教授が「やや逆境、めげない、わかれなし」と、よく言っていたことを思い出す。「わかれなし」は卒業してもいつまでも研究室の一員だ、という意味だったと思う。だけども、「やや逆境」と「めげない」については言葉では理解できるけれど、実感がわかないというのが正直な感想だった。
あれから数年が経ってこの意味をあらためて考えると、研究室で自分がすべきこと、それを端的に表したのが「やや逆境、めげない」だったのだと思う。文章にすると「やや逆境に身をおいて、めげずに頑張ること」というより「やや逆境におかれても、めげずに頑張れること」がきっと近くて、それを見つけることが真意なのではないか。自分がやりたいことを見つけるのは簡単ではない。そんなときに、助けになる考え方だと思う。
視点を変えれば、「めげずに頑張れること」を探してあげることは研究室の役割だ。そのときに「やや逆境」の状況を与えることが、先生や先輩の役目なのだと思う。“やや”というところが難しいけれど、絶妙な塩梅で利いている。
また研究室に入った頃を振り返ると、飲み会の席で「自分はSかMか?」の議論をよくしていたことを思い出す。言うまでもなくサディズムかマゾヒズムかの話であり、「景観デザインを志す学生はたいていM」というのが師である星野裕司准教授(当時、助手)の見解だった。急にSMの話になってしまったが、おそらく受け身であるMの学生は自分がなすべきことを「やや逆境」という状況から見出さなければならない。
点と点を強引に線で結ぶと、二人の師が語っていたことは紛れもない教育論であった。そして、僕はこれを“SM教育論”と名付けることにしよう。
それでは、今年もよろしくお願いします。卒業しても、わかれなし。
photo&text/
Kota MASUYAMA