2008年3月
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僕らの知らない小さな僕ら
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研究室に配属された頃、凹む毎日が続いた。何をやってもどこか不十分、自身は打ち砕かれ、自分の無力さだけが切実に実感できる唯一の事だったように思う。だから、成長したかったし、がむしゃらに頑張ろうと思った。身銭を切って、本を買って読み、多くのモノを見た。修行するために東京の設計事務所でバイトしたりGSに参加した。その過程の全てが小さな挫折だったように思う。同い年に感じる確実な実力差、著名な建築家の若かりし頃、活躍する設計者たち・・・言い出せばきりがない。研究室に配属されて以来、自分の小ささを少しでも乗り越えようとする毎日だったように思う。少しは成長できたんじゃないだろうか(成長していなかったらすいません)。
そしてもう1つ。自分の小ささを痛感していく中で気づいたことがある。それは僕たちが研究室でやっているいくつかの事の「大きさ」。どう大きいかを話しだすと、何だか急に軽くなってしまうからココでは言わないことにする。僕らは所謂天才の集団ではない。きっと凡人の集団だけれど、確かに何か大きなことを成し遂げようとしている気がする。
この事を思う時、いつも白水堰堤を思い出す。白水堰堤を設計したのは大分県の技師・小野安夫。いまや日本一美しい堰堤とも称される白水堰堤は、農業高校を卒業した一地方技師によって生み出されている。小野が天才か凡人かは定かではないけれど、地方の人間が大きな事を成し遂げている。白水堰堤そのものの美しさや周辺空間の豊かさに加えて、僕は地方の一技師の小野が、辞職をも決意し情熱を傾けて設計したという理由で白水堰堤が大好きだ。匹敵するかはわからないけど、微かな予感がしてる。
僕から研究室のメンバーへ。自分の小ささと、自分たちの大きさ。どっちも自分の世界を少し広げて、自分や自分たちを位置付けることで初めてわかる事だと思う。
まず自分の小さな部分を見つけて欲しい。幼く、稚拙な、至らない部分を。きっとその小ささは、自分が今抱えている世界の少しだけ外側に行くことで見えてくると思う。成長のカギもそこにあるんじゃないかと思う。そして、その小ささを乗り越えて、成長して欲しい。これは願いだけど、自分へ言い聞かせる意味合いの方が強いかもしれない。僕も常に小ささを実感し、成長していきたい。その中で自分たちがやっている事の大きさも知って欲しい。知った上で色んな事に取り組んで欲しい。そして大きな何かを成し遂げて欲しいし、僕も成し遂げたい。(すごく勝手な意見だけど・・・)そうやって成長し、大きな何かを成し遂げていく中で、僕らのこの研究室での毎日を思い出として語れる日がやってくるような気がしてる。(思い出は過去だから、僕らが過去足りうるものにする必要があると思う)
ちょっとストイック過ぎかな?本当にそう思ってるけど、キモチ半分くらいで読んでくれたらと思います。というか長くなってごめんね。読んでくれた人ありがとう。
photo&text/
Yuki YAMADA