2009年1月
title/「花一輪」または「想像力」について
comment/
― 花一輪 ―
鳥がさえずり 日が昇る
海に集いし人々は
沖より来たる力を浴びて
ただ今日の日に祈りをこめる
浜にたたずむ少年は
夢と勇気をたずさえて
意気揚々ときびすをかえし
ただ今日の日に視線をこらす
此の地から 彼の地まで
数限り無い思いが揺れて
大地に触れる この民々に
花一輪の 奇跡がおこる
名残惜しとて 日が沈む
山に集いし人々は
西へと向かう力をたぐり
また明日の日に願いをこめる
峰にたたずむ少女には
優しく包む 力が宿り
紅く染まったその顔で
天高々と心を放つ
彼の地から 此の地まで
数限り無い命が揺れて
気に包まれし この民々に
花一輪の 奇跡がおこる
花一輪の 宇宙の中で
修士論文を書くにあたって、大きく影響を受けた詩である。
初めて読んだとき、胸が熱くなって、涙がこみ上げてきたのを覚えている。(作者を知っていて、彼が亡くなった数日後に詩の存在を知った。)
この詩は西の貧しい国で生まれた。
この貧しさの中に、重要なヒントがあるような気がしていた。
そこでは命をとても身近に感じるらしい。
生きてゆくこと自体の難しさ。その反面に、小さな幸せや笑顔が切実なものとなる世界。
どのようにして、この生のリアルさを実感することができるか。
残念ながら、僕等がそれを共感することは難しい。
僕はその手掛かりを想像力に期待したいと思う。
壁の向こう側にも世界が存在する確からしさ、
手紙の言葉に込められた意味は、その向こう側に浮かび上がる人の表情を想像することでリアルさを帯びる。
実は、世界は見えないもののほうが多いことに気づいているだろうか。
現実世界のリアルさは、想像力(第六感)という不可解なものに支えられているらしい。
だから感覚を閉じていてはいけない。
時代や信仰と共に変わり続けてきた世界観。
そして人は進歩と共に、地球が孤独な存在であることに気づいた。
想像力を廻らせばわかることだ。
この一つの塊の中で、これにすがって仲良く生きてゆくしかない。
花一輪の世界で。
僕は強く生きてゆく
(写真「月周回衛星かぐやから見た地球」:JAXAより)
※この写真は撮りようがないので、でも使いたかったのでご勘弁を。
photo&text/Yoshifumi YAMASHITA