2010年1月
title/ゼロからの視点
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ちょっとイメージしてみてください.
なんにもない,まっさらな世界に,なにか一つ,なんでもいいからモノをつくれるとして,
みなさんは何をデザインすることをイメージしますか?
土木専攻だから「橋をつくる」という人もいるかもしれません.それはどんな橋でしょうか?
「何もつくらない」という選択肢もあるかもしれません.
僕は,真っ白なスツールをつくって,大好きな人をそこに座らせて,おしゃべりしたいなと思いました.
「ただ好きな人といたいだけじゃん」と思われるかもしれませんが,それだけじゃなくて,
僕は,「人と人とを繋ぐことができるもの」をつくりたいのかなと思いました.
すごく単純なことだけど,すごく大事なことな気がしています.
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話し変わって,僕が最近で一番印象に残っている映画の中の台詞を,突然ですが載せたいと思います.
「いつも通る道でも,違う所を踏んで歩くことができる.
いつも通る道だからって,景色は同じじゃない.
それだけでは,いけないのか.
それだけのことだから,いけないのか.
(中略)
いつも通る道だからって,景色は同じじゃない.
それだけじゃ……いけないのか.」
押井守監督の「The Sky Crawlers(スカイ・クロラ)」という映画の主人公が最後に言う台詞です.
繰り返しの運命のなかで生きる主人公が.その運命を塗り替えようとするシーンです.
僕はこの台詞を聞いて,すごく大事なことを問いかけられている気がしました.
景観デザインという分野では,まちの歴史や地域性といったものが,
デザインソースとされることはもはや当たり前のこととなっている気がします.
ただ,当たり前になってきているからこそ,歴史は繰り返していればそれでいい,
というようなデザインが散見されるようになってきているのではと最近思っています.
でも,そうじゃなくて,歴史はデザインという行為で塗り替えていくべきものだと,この台詞を聞いて思いました.
「脱・繰り返し」を,新たな歴史の創造を実現させるためには,
何にもないところから何かを生み出そうとする力が必要なのかなと思います.
すごく単純な発想なんですけどね.
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「ゼロからの視点」
みんなそれぞれのゼロからの視点を持っていると思います.
まっさらな世界から何を生み出すかという力は,デザインという行為において,すごく大事なものなんじゃないでしょうか.
写真は広島の芸北スキー場からの眺めです.
ほんとは真っ白な白銀世界を撮りたかったんですが,うまく撮れなかったんで,これで勘弁してください.
photo&text/Yuki HASEGAWA