Research

豪雨現象の予測・メカニズムの解明

Heavy Rainfall Mechanisms & Climate Change Impact Assessment

近年,日本各地で激甚な豪雨被害が頻発しています. 特に九州地方においては,2017年の九州北部豪雨や2020年の令和2年7月豪雨(球磨川水系)など,甚大な被害をもたらす豪雨が相次いでいます. また,外水氾濫や内水氾濫を引き起こすような集中豪雨は,もはや毎年のように発生しているのが現状です. 当研究室では,こうした豪雨現象に対し,衛星データ,気象レーダー,地上観測地点などの多種多様な観測データを用い,さらに領域気象モデルを用いた数値シミュレーションを組み合わせることで,その発生メカニズムの究明に取り組んでいます. また,気候変動対策を見据えた研究として,将来気候予測データの「力学的ダウンスケーリング」による地域レベルでの豪雨予測や,領域大気モデルを用いた各流域における「物理的可能最大降水量(PMP:想定最大降水量)」の推定なども行っています. これらの研究成果を通じて,激甚化する豪雨災害に対する防災・減災,および持続可能な地域社会の構築に貢献することを目指しています.

1.観測データを用いた豪雨発生メカニズムの解析

高時空間分解能レーダー(XRAIN)

現在,日本では国土交通省によってXバンドMPレーダーのネットワークが整備されています. Cバンドレーダーと組み合わせることで,日本全国の降水量分布を1分間隔・約250m解像度という詳細さで把握することが可能です. また,5分間で3次元的な降水分布を観測できる点もXバンドMPレーダーの大きな特徴です. これらのデータを活用し,九州北部を中心とした豪雨のメカニズム解析に取り組んでいます

気象衛星ひまわり

ニュースの天気予報などでお馴染みの気象衛星ひまわり. よく目にするのは可視画像,赤外画像だと思います. これらは気象衛星ひまわりにより観測されているものの一部であり,16の波長バンドを持つ高性能な放射計(AHI)を搭載しています. 気象衛星ひまわりデータを用いて,豪雨に関する解析を進めています.

Heavy Rainfall Research

レーダーデータによる3次元解析
(XRAIN,国土地理院空中写真を利用)

2.領域大気モデルを用いた豪雨の解析

豪雨の再現計算

まず,領域大気モデルを用いた高解像での3次元大気シミュレーションにより豪雨の再現計算を行います. 豪雨イベント次第ですが,九州の豪雨を解析するときには数百m~1km程度の解像度を用います. 実際の降水分布が再現できるように大気モデルを調整していきます.

豪雨メカニズムの解析

領域大気モデルは,3次元の物理プロセスをシミュレーションするため,出力データには水蒸気量や気温といった大気変数がすべて網羅されています. 本研究室では,数百m〜1kmという極めて高い解像度で計算を行うことにより,詳細な地形を反映した精緻な3次元解析を実現しています. これらのシミュレーションデータを駆使して,豪雨の発生メカニズムの解明を進めています. 豪雨の正体を明らかにすることで,予測精度の向上などを通じ,社会の防災・減災に寄与することを目指しています.

Precipitation Analysis

2017年豪雨の解析 (石田ら,2017)

3.高解像度シミュレーションによる将来予測

将来気候予測データの力学的ダウンスケーリング

将来気候の予測は全球気候モデル(GCM)により行われています. 計算資源の限界があり,GCMの水平解像度は100km以上のものが多く,地域・流域レベルの解析には粗すぎます. また,シミュレーションの中で日本の豪雨時の大気の状況を適切に表現できません. そこで,領域大気モデルによる高解像度化(力学的ダウンスケーリング)を行います.

2km格子での日本全国シミュレーション

現在,日本全国の1級水系流域を全てカバーするように力学的ダウンスケーリングを進めています. 領域大気モデルの計算領域を複数に分け,各計算領域内の流域に対して,モデルの調整を行っています. その上で.将来気候予測データの力学的ダウンスケーリングを進めていきます. 2kmという将来な解像度で行うことにより,日本の複雑な地形を反映させた,将来予測が可能となります.

全1級水系流域を対象とした計算領域

4.降水量の物理的上限の推定

想定最大降水量(PMP)の推定

その地域・流域において,どれだけの雨が降りうるのか,というのは,水利構造物の設計を含め水害対策を行う上で非常に重要な情報となります. この想定最大降水量の推定には,従来統計的手法が用いられてきました. ただし,統計的手法では地形の影響や地球温暖化の影響を適切に含められないという問題がありました. そこで,領域大気モデルを用いた,想定最大降水量の推定手法の開発を行っています.

アメリカ・カリフォルニアにおける事例

本手法はアメリカ西海岸のカリフォルニア州の流域を対象に開発を行いました. その研究はアメリカで非常に高く評価され,アメリカ土木学会(ASCE)から J. James R. Croes Medal, 2016 をいただきました.

PMP

物理プロセスに基づく想定最大降水量の推定
(Ishida et al., 2017)