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施工のポイント

 

 

【1次掘削】試行の段階と位置づけ、ボーリング調査のみではわからない地質の状況確認、および岩肌の仕上げ方の検証を行った。

【2次掘削】分水路のおおよその形状を造る段階である。1次掘削の結果をふまえ、図面形状にこだわらずに、岩の節理に沿った発破・掘削を行うことで自然な仕上がりを実現した。

【3次掘削】利活用を想定した仕上げを施す段階。2次掘削で現れた岩肌の迫力を活かしながら、多様な活動を生む河床の仕上げや適切な動線配置などに対して入念な議論と丁寧な配慮を行った。

施工にあたった6業者は、すべて地場の建設会社であった。図面のみでは表現できない設計に対して、施工中に参照できるように提出した粘土模型や、頻繁なデザイン監理による入念な議論を行った。その結果、岩肌を破砕する発破(ダイナマイト)の位置を10cm単位で細かく監理したり、バックホーの先端にブラシを取り付け、細かな岩を丁寧に除去したり、現場における様々な工夫を積み重ねることで、この空間は実現された。

1次掘削(H20.10〜H21.3)


 

 

仕上げ方の検討

1次掘削において、岩肌の仕上げを数種類試行して、現場・実物による検証を行った。写真上段が通常の図面通りの仕上げ、下段が岩の節理に沿った掘削であり、デザインコンセプトに適した自然な仕上がりとして、下段の仕上げ方を採用した。


2次掘削(H21.3〜H22.3)



 

 

森づくりとしての法面緑化

2次掘削では、岩盤上に残る土砂法面の安定化も大きな課題であった。将来は森となるような保護を行いたいと考え、宮崎県綾町の照葉樹林文化推進専門監である河野耕三氏に指導を受けた。潜在自然植生の考え方に基づき、「混植・密植」による森づくりをおこなうものである。主役の木となるシイやカシ類を中心に、12科目23種を1000本/100mの高密度で植樹した。混植によって「多層群落の森」を早期に形成し、法面の安全に資するとともに、密植による競り合い効果により成長促進と充実した根の生育に期待したものである。

3次掘削(H22.3〜H23.3)


 

 

自然と人工を繋ぐ石積み

本来、森となる法面、岩掘削のみで分水路内が仕上がることが理想ではあったが、場所によっては石積みで護岸を造る必要が生じた。また、分水路の呑口には護床工として、吐口には水流を方向付けるために大きな護岸が必要であった。これらの石積みには、自然な渓谷のような景観を壊さないよう、西日本科学技術研究所の福留脩文氏に指導を受けた。現地の裏面の岩肌が比較的水平・垂直に節理が通っていたため、布積みを基本に角を出して鼻筋が通る施工を行った。これらの技術は、現地での実習を通じて修得している。