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熊本大学 工学部 社会環境工学科 / 大学院 社会環境工学専攻

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教員と研究グループ

研究プロジェクト

プロジェクト名 衝撃エネルギー工学の創生のためのコンクリートの環境軽負荷技術の開発

熊本大学社会環境工学科のコンクリート研究グループは、グローバルCOEプログラム「衝撃エネルギー工学グローバル先導拠点」に参加し、 衝撃エネルギーを用いたコンクリートの環境軽負荷技術の開発を行っています。そこで、現在までに検討中のテーマとこれまでの成果について紹介します。

1.衝撃エネルギーにより処理された藻類のポーラスコンクリートによる固定化

立命館大学・理工学部では、10年間近くポーラスコンクリートの実用化を研究し、 「葦(あし)を植生させたポーラスコンクリート」を琵琶湖周辺に設置し、「経年による植栽面積の変化、 葦の成長度、水質浄化機能および周辺生物環境への影響」を調査しています。 一方、熊本大学21世紀COEプログラムでは、パルスパワー技術の応用を図り、 これを水中藻類の「アオコ」の処理に適用し、 図-1のようにパルス放電で容易に仮死状態とすることが出来ることを明らかにしています。

図-1 パルス放電前(左)と放電後(右)のアオコの様子

写真-1 共同研究開始期の様子

この場合の問題点は仮死状態になったアオコ処理であり,グローバルCOEプログラムでは立命館大学との共同研究(写真-1)により ポーラスコンクリートの適用した固定化に注目し研究を開始しました。  図-2のように実験1では,立命館大学・理工学部・研究施設内のプールにポーラスコンクリート(以下POC)を沈め, 琵琶湖もしくはその内湖から採取してきたアオコをプールに浮かべ衝撃エネルギー発生装置によって沈下させることによって,POC 内部に取り込ませることに成功し,リン等富栄養化物質の閉鎖実験系内収支の算定や水質保全の効果を把握しています。

図-2
琵琶湖での共同実験の安定的かつ効率よく育成し、 琵琶湖の清浄化・生態系保全策を試みる計画です。

2.衝撃エネルギーの廃コンクリート解体技術への応用

高効率・高出力パルス放電発生装置を利用した、複合材料の素材別分離・回収技術、ならびに構造体の解体技術の開発研究を進めています。
その成果の一つとして、セメント硬化体と骨材からなるコンクリートの破砕とそれによる骨材の分離・回収、すなわち再生骨材製造法が確立されています。 図-3に示すように、水中に設置した電極間のコンクリートに高電圧を印加します。すると、水、コンクリートを形成する無機固体、 およびコンクリート中の細孔に存在する空気それぞれの誘電率の相違から、コンクリート細孔中の空気を伝うように瞬間的に高圧電流が通過します。 このコンクリート内パルス放電により、 コンクリート細孔中の空気は瞬間的にイオン化しプラズマとなり、大膨張を起こします。 その際の圧力によってコンクリートが破砕します。 コンクリート中の細孔は、主に遷移帯と呼ばれる骨材とセメント硬化体との境界やセメント硬化体中に存在し、 粗骨材とモルタル部、あるいは細骨材とセメント硬化体との分離が進みます。 一方、それと同時に発生する固体中を伝播する衝撃波は、異種材料間の境界面における反射波によって引張力を発生します。 それによってさらに骨材と骨材表面の付着物との分離が進んで、コンクリート中の骨材が元の形状や品質を殆ど損なうことなく回収されます。 以上の原理を用いた本再生骨材製造法によって回収された骨材の品質評価やその制御法の考案を行って、 現在は図-4に示すプロトタイププラントを使用した実証実験を行っています。廃コンクリートの減量化、 リサイクル化の実現に向け、高効率・省エネルギー化を進めています。

(1)水中において,任意の目空きを持つメッシュで作成されたカゴ状の低電圧電極内の コンクリートにパルス放電を数回繰り返し行う。

(2)パルス放電の繰り返しにともなって次第にコンクリートが破砕され, メッシュ内に留まる粗骨材(右上)と水槽底に落下する細骨材(左下)に分級される。
(3)さらにメッシュ内では骨材とセメント硬化体との分離が進行し, 高品質な骨材に再生される(右下)。

図-3
水中コンクリート内パルス放電によるコンクリートの破砕と骨材の分離

図-4
性能実証用プロトタイププラント
3.衝撃エネルギーを用いたコンクリート内部欠陥の非破壊評価

衝撃力による弾性波を検出するImpact-Echo法を改良し、 コンクリート内部欠陥の位置を断面部の画像化により検出する SIBIE(Stack Imaging of spectral amplitude Based on Impact Echo)法 を開発中です。 本調査では、本手法をこの手法を下部工(A1)工事ひび割れ調査に適用した。 図-5に示す下部工(A1)の背面部の表面ひび割れであるNo. 9、 No.10、 No. 11の発生箇所を調査対象としました。 ただし、実験を行った時点でこれらのひび割れは表面補修が行われ表面部にひび割れは認められませんでした。

図-5 橋台A1背面部のひび割れ状

ただし、実験を行った時点でこれらのひび割れは表面補修が行われ表面部にひび割れは認められませんでした。 ただし、表面部の補修のみを行ったため、内部のひび割れは初期状態のまま残されていると考えられました。 調査によれば、これらのひび割れ深さは超音波法(iTECS)によって、No. 9部 70mm、No. 10部 50mm、No. 11部 60mm となっていました。

衝撃力の入力には、鋼球より大きな衝撃力を与えられ、再現性も問題ない方法として 開発したアルミ飛翔体を可搬式コンプレッサからの空気圧(約0.05MPa)により打撃する方法を用いました。 試験では、ひび割れから50mm離れたコンクリート表面の1点でアルミ飛翔体により衝撃を入力し、ひび割れから衝撃点と 反対方向に50mm離れた箇所に加速度計システム(小野測器製:NP-3210)の加速度計を固定し、波形を検出しました。 No. 9、 No. 10、 No. 11での代表的なSIBIE解析結果を図‐6に示します。

(a) ひび割れNo. 9部 (b) ひび割れNo. 10部 (c) ひび割れNo. 11部
図‐6 ひび割れ部でのSIBIE解析結果

これらの結果の興味深い点は、ひび割れ底部以外に、表面部に反射部が認められることです。 これは補修材の深さと考えられます。図のひび割れ底部の深さを各測定部3か所の平均として求めると No. 9部は76.7 mm (iTECS、 70 mm)、No. 10部60 mm (50 mm)、No. 11部90 mm (60mm)とひび割れ部No.11を除けば、 今回の3か所で測定したSIBIE法の結果の平均値は、 ほぼiTECS法で測定した結果と一致することが認められました。 ただし、同じひび割れ部であっても、 測定位置は異なっているので、この程度の違いはあっても当然と考えられます。 したがって、これらの結果から本補修工事では、表面補修のみが施され、 内部のひび割れは元のまま残されていることが認められました。 また、未充填ひび割れのひび割れ深さ測定が、現場試験でも可能であることが明らかになりました。 さらに、表面補修部分の深さも評価できる可能性は新たな発見と言うことができます。 このようにSIBIE法の現場試験への適用に関して、非常に有用な資料を得ることができました。



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